Good King Wenceslas《善良な王様ウェンチェスラス》Piae Cantiones
Good King Wenceslas looked out
On the feast of Stephen
When the snow lay round about
Deep and crisp and even
Brightly shone the moon that night
Though the frost was cruel
When a poor man came in sight
Gath'ring winter fuel.
善良な王様ウェンチェスラスはご覧になった、*1
聖ステファノの祝い日に。*2
外は一面の雪で、
ぶ厚くきらきら光っていた、
月さえもまぶしく照っていた。
ひどく凍てついているのに、
貧しい男が眼に入った、
冬の薪を集めている男を。
"Hither, page, and stand by me
If thou know'st it, telling
Yonder peasant, who is he?
Where and what his dwelling?"
"Sire, he lives a good league hence
Underneath the mountain
Right against the forest fence
By Saint Agnes' fountain."
「こちらへ、お小姓よ、近う寄れ、
知っているなら聞かせよ、
あそこの百姓は何者じゃ?
どこに住んでいる者かね?」
「陛下、あのものはとても遠くの
山のふもとに住んでおります。
森を囲う柵に面したところ
聖アグネスの泉のほとりでございます。」*3
"Bring me flesh and bring me wine
Bring me pine logs hither
Thou and I will see him dine
When we bear him thither."
Page and monarch forth they went
Forth they went together
Through the rude wind's wild lament
And the bitter weather.
「肉とワインを持ってまいれ、
松の丸太も持ってまいれ、
そちとわしとであの者に馳走しよう、
あの者の方へ運んで行こう。」
お小姓と王様は奮い立って向かった、
奮い立って共に向かった、
荒々しい風の狂おしい哀歌の中、
つらい荒れ模様の中を。
"Sire, the night is darker now
And the wind blows stronger
Fails my heart, I know not how,
I can go no longer."
"Mark my footsteps, my good page
Tread thou in them boldly
Thou shalt find the winter's rage
Freeze thy blood less coldly."
「陛下、夜も更けてまいりました、
風も強くなってまいりました。
わたしの心はくじけて、どうすればよいのか
これ以上わたしは行けませぬ。」
「わしの足跡を踏んで行け、かわいいお小姓よ、
くっきりとついた足跡をたどって行け、
少しは寒さがましになろう、
冬の厳しさで凍るそちの血も。」
In his master's steps he trod
Where the snow lay dinted
Heat was in the very sod
Which the Saint had printed
Therefore, Christian men, be sure
Wealth or rank possessing
Ye who now will bless the poor
Shall yourselves find blessing!
お小姓は主の足跡を踏みわけて行った、
雪にくっきりとついたへこみを。
草地が覗くほど深く刻まれたぬくもり、
それは聖者がつけたもの。
それゆえ、キリスト教徒よ、
富める者、持てる者よ、
持たざる者を祝福するあなたがたには
確かな祝福があるだろう!
*1 《善王ヴァーツラフ》《ウェンツェル王様は》《ウェンセスラスはよい王様》などの異称があるが、10世紀のボヘミア大公でボヘミア(現チェコ)の守護聖人である聖ヴァーツラフのこと。祖母聖ルドミラの影響を受けてキリスト教徒となったが、異教徒である母やキリスト教を受け入れない貴族たちと対立し、弟に暗殺される。しかし死後にその墓で奇蹟が起こると評判になり、弟に改葬された。ボヘミアが危機に陥ったときに再び現れるという赤ひげ的な伝説がある。
*2 新約聖書『使徒言行録』に登場する、12月26日を記念日とする聖人。イエスが昇天してから一番最初に殉教したとされる。「天使のような顔」という記述から、美青年として描かれることが多い。シンボルは殺される際に投げつけられた石、また殉教者の持ち物であるしゅろの枝。26日は「ボクシング・デイ(箱の日)」と呼ばれ、使用人や郵便配達人など25日にも働いていた人々をねぎらってプレゼントを渡す日、また教会では献金箱をあける日でもある。
*3 ローマ時代の聖女。結婚を強要され拒否し、裸に剥かれて女郎屋に放り込まれたが、髪が伸びてその身を覆い隠したという。少女の守護聖人。
text: John Mason Neale (1818-1866)
tune: Piae Cantiones (1582)
メロディそのものは13世紀に春を喜ぶ歌(Tempus Adest Floridum《今や花開く時》)として生まれ、1582年にスウェーデンの聖歌集『ピエー・カンツィオーネス』に収録された。その後19世紀半ばに再発見され、イギリスの司祭ジョン・メイソン・ニールとその友人で指揮者のトマス・ヘルモアによって編集・改変を加えられ、クリスマスのキャロルとして愛されるようになった。
ヴァーツラフ自身には貧しい人々のところへ自ら薪を背負って訪ね歩くなどの聖人説話があるが、この歌詞そのものは、作詞者であるニールの創作。チェコでこのキャロルが紹介された際に、「そんな話あったっけ…」と困惑されたという逸話がある。
「プラハ聖ヴィート大聖堂のステンドグラス」
スラヴで重要な聖人を勢揃いさせたデザインで、中央パネルの下から三段目と四段目に、ヴァーツラフとルドミラも描かれている。収録アルバム: Christmas at St. John's
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