Mother Carey《マザー・ケアリー》Keel
Mother Carey? She's the mother o' the witches
'N' all them sort o' rips;
She's a fine gell to look at, but the hitch is,
She's a sight too fond of ships;
She lives upon an iceberg to the norred,
'N' her man he's Davy Jones,
'N' she combs the weeds upon her forred
With pore drowned sailors' bones.
マザー・ケアリー、彼女こそ魔女どもの母
いわゆるあばずれどもの親玉。
見かけはいい女だが、難点がある*1
船という船に目がないってことだ。*2
彼女ははるか北の氷山の上に住む、*3
夫はあのデイヴィ・ジョーンズ*4
彼女は髪の毛の海草をくしけずる、
哀れ溺れた水兵どもの骨を使って。
She's the mother o' the wrecks, 'n' the mother
Of all big winds as blows;
She's up to some deviltry or other
When it storms, or sleets, or snows;
The noise of the wind's her screamin',
'I'm arter a plump, young, fine,
Brass-buttoned, beefy-ribbed young seam'n
So as me 'n' my mate kin dine.'
あの女こそが沈没船の造り手、
そして大風と嵐の母。
その所行は悪魔か何かのよう
嵐も、みぞれも、大雪も起こす。
風の音が彼女の叫び声
「あたしの獲物はまるまる太って、若く、美しい*5
真鍮のボタンをちりばめ、あばらに肉が詰まった若い海の男
そんなのがあたしとあたしの連れ合いのごちそう。」
She's a hungry old rip 'n' a cruel
For sailor-men like we,
She's give a many mariners the gruel
'N' a long sleep under sea;
She's the blood o' many a crew upon her
'N' the bones of many a wreck,
'N' she's barnacles a-growin' on her
'N' shark's teeth round her neck.
あの女こそは残酷なあばずれ
俺らのような水兵達に飢えている
奴はたくさんの水夫達をなぶりつくして
海の下で永遠の眠りにつかせる。
大勢の船乗り達の血と
難破船の残骸をひっかぶって、
フジツボどもがその体にはりついて育ち
鮫の歯が彼女の首を飾る。
I ain't never had no schoolin'
Nor read no books like you,
But I knows 't ain't healthy to be foolin'
With that there gristly two;
You're young, you thinks, 'n' you're lairy,
But if you're to make old bones,
Steer clear, I says, o' Mother Carey,
'N' that there Davy Jones.
俺は学校に行ったこともないし、
お前さんのように本も読めない
だがあいつらとふざけちゃこの身が危ういってのを知ってるんだ、
あのぬるぬるの気色悪いアベックとはな。*6
お前さんは若く、賢く、生意気だが
もしも長生きしたいんなら*7
すぐさま舵を切るんだ、そら、あのマザー・ケアリーと*8
デイヴィ・ジョーンズが相手ならな。
*1 「but the hitch is」は「ひとつ問題があって…」というときの典型的な言い回し。
もしも長生きしたいんなら*7
すぐさま舵を切るんだ、そら、あのマザー・ケアリーと*8
デイヴィ・ジョーンズが相手ならな。
*1 「but the hitch is」は「ひとつ問題があって…」というときの典型的な言い回し。
*2 「a sight too」で「あまりに~過ぎる」、 「fond of」で「~が好き」。直訳で「船が好きすぎる」の意。
*3 norred northward(北方へ)のなまり。
*4 「デイヴィ・ジョーンズ」は船乗りたちが海の悪霊の親玉につけた愛称。
*3 norred northward(北方へ)のなまり。
*4 「デイヴィ・ジョーンズ」は船乗りたちが海の悪霊の親玉につけた愛称。
*5 I'm arter=I'm after(探している、狙っている)のなまったもの。A Pirate's Life《パイレーツ・ライフ(海賊の暮らし)》Peter Pan
Oh, a pirate's life is a wonderful life.A rovin' over the sea, Give me a career as a buccaneer. おー、海賊の暮らしは素敵な暮らし。 海をめぐってぶんどり放題、 バッカニアくらいには稼がせな。*1
cockrobin96.blogspot.com
*6 gristly two マザー・ケアリーとデイヴィ・ジョーンズを「軟骨質の二人組」と呼び表している。また「grisly(ぞっとする、身の毛もよだつ)」とひっかけている。タコやダイオウイカなどのとらえがたく不気味な軟体海洋生物のイメージかもしれない。
*7 make old bonesで「長生きする」の意。普通は否定形で「そんなんじゃ長生きできないよ!」みたいに使う。
*7 make old bonesで「長生きする」の意。普通は否定形で「そんなんじゃ長生きできないよ!」みたいに使う。
*8 「Steer clear」は「避ける、近づかない、関わり合いにならない」の意。舵を切って障害物を避けることに由来する。
text: John Masefield(1878 – 1967)
tune: Frederick Keel (1871 – 1954)
キールの《Salt-Water Ballads(潮水のバラッド)》という三部曲のうちのひとつ。キールは歌手としての活動がメインであり、自ら作曲したものは少ないが、民謡とエリザベス朝音楽に造詣が深い研究者でもあった。
イギリスの桂冠詩人で児童文学作家にして、元船乗りとしても知られるジョン・メイスフィールドの詩をもとにしている。原詩の冒頭には「(as told me by the bo'sun)甲板長我に語る」という但し書きがついている。
マザー・ケアリーとは19世紀頃に水夫たちのあいだで語られた海の妖精の一種。「ケアリーおばさん」「カレー母さん」とも訳される。一説には聖母マリアの尊称のひとつ「マテル・カラ(尊い母)」が変化したものとされる。船を導く「ステラ・マリス(海の星)」転じて船を災難に遭わせる妖怪になったわけである。ウミツバメのことを「マザー・ケアリーのニワトリ」、オオフルマカモメを「マザー・ケアリーのガチョウ」と呼ぶ。
マザー・ケアリーは英国でかつて非常に人気があったが、異人種や貧困層への差別に富むため廃れた児童小説『水の子』(キングスレー)にも登場する。北極に住む、氷山ほどもある白い大きな老女とされ、海の生物たちを見守る。
ギュスターヴ=アドルフ・モッサ(1883 - 1971)
「彼女(Elle)」
Will Liverman & Jonathan King
収録アルバム: Whither Must I Wander
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