キャブ・キャロウェイによるベティ・ブープ『白雪姫』(1933)の劇中歌
氷の棺に閉じ込められた白雪姫ことベティさんを憐れんで道化師ココが歌う。


1941年録音バージョン。

Folks, I'm goin' down to St. James Infirmary,
See my baby there;
She's stretched out on a long, white table,
She's so sweet, so cold, so fair.
聖ジェームズ診療所まで出向いて*1
そこで俺のかわいこちゃんに会ったんだ
彼女は長い白い台にだらんと伸びていた、
愛らしく、冷たく、美しかった

Let it go, let it go, Oh brother,
Wherever she may be,
She will search this wide world over,
But she'll never find another sweet man like me.
かまわないでくれ、かまわないでくれよ*2
彼女がどこにいようとも
この広い世界中を探しまわろうとも
俺みたいないい男は他に見つからないってのに

Now, when I die, bury me in my straight-leg britches,
Put on a box-back coat and a stetson hat,
Put a twenty-dollar gold piece on my watch chain,
So you can let all the boys know I died standing pat.
なあ、俺が死んだらストレートパンツを履かせて埋めてくれよ
おしゃれなコートにステットソンの帽子も着せて*3*4
20ドル金貨を懐中時計の鎖に吊るしてくれ
そしたら俺が死んでも変わらずイケてるってみんなにわかるだろう*5

An' give me six crap shooting pall bearers,
Let a chorus girl sing me a song.
Put a red hot jazz band at the top of my head
So we can raise Hallelujah as we go along.
棺の担ぎ手六人は博打仲間で頼むよ*6
コーラスガールに歌を歌わせて
お熱いジャズバンドを俺の頭の方に置いてくれ
そしたら葬列を組みながらみんなでハレルヤを歌えるだろう

Folks, now that you have heard my story,
Say, boy, hand me another shot of that booze;
If anyone should ask you,
Tell 'em I've got those St. James Infirmary blues.
皆の衆、これが俺の聞かせる物語
さあ、もっと酔っぱらえる酒をついでくれよ
もしもだれか俺のことを聞きたがる奴がいたら
俺は聖ジェームズ診療所のブルースに憑かれてるんだと言っとくれ

*1 日本語訳では「病院」となっていることが多いが、Infirmaryはhospitalよりも小規模な医務室や診療所を指す。hospitalにしているバージョンもある。go down to は下がる、降りるの他に、単に〜まで出かける、赴くという意味がある。
*2 Let it goはアナ雪で一躍有名になった慣用句だが、「解き放とう」「手放そう」「ほっとこう」「諦めよう」などの意味になる。
*3 box-back coatとは、ウエストを絞らずまっすぐに仕立てた、ゆったりめの男性用コート。1890年代から1910年代にかけて流行した。収録アルバム「Hi De Ho Man」のジャケットのキャブが着ている黄色いコートがイメージに近い。のちに肩パッドを極端に強調しすそをひざ下まで垂らす「ズートスーツ」の原型となった。
*4 ステットソンはつばの広い紳士帽で有名な高級ブランド。
*5 stand pat はアメリカで使われる慣用句で、ポーカーで最初に配られた手札を替えないこと(ジョジョ第三部のダービー兄戦のアレ)。転じて頑固なまでの現状維持者。
*6 crap shootはさいころ博打のこと。転じて危険で不確かな賭け、または非公式なことも指す。英英辞典で調べたらそう出た。

text & tune: 作者不詳のアメリカ民謡

「死んだ子供に会いに行く歌」として誤解されることもあるが、どう読んでも死んだ恋人に会いに行く歌である。陰々滅々とした曲調の、ブルースの典型にして古典的名曲で、多くの歌手にカバーされている。
1927年に出版したアメリカ民謡集『The American Songbag(アメリカの歌袋)』にも収録されており、Gambler's Blues《ばくち打ちのブルース》という別タイトルもある。

Joe Primrose(アメリカの音楽実業家Irving Mills1894-1985の変名)によって登録されているが、実際は上記の通り作者不詳の民謡であり、それをミルズが1929年に(勝手に)登録したもの。

さらなる起源として、古いアメリカ民謡Streets of Laredo《ラレードの通り》があげられる。銃で撃たれ死に瀕しているカウボーイが、語り手に自分の葬儀の時にしてほしいことを頼むという内容だった。

そしてさらなる原曲が18世紀のアイルランドのバラッドThe Unfortunate Rake《不運な放蕩者》であろうとされている。行きずりの女性に梅毒を伝染され死に瀕している男が、聖ジェームズ病院で語り手に向かって不幸を訴え、やはり自分が死んだ時にして欲しいことを頼むというストーリー。下ネタソングじゃないか!
いずれも「白(原曲二つは、死にかけた男は白い布にくるまれている)」「遺言(葬儀の時にやってほしいこと)」「6人(棺の担ぎ手)」が重要なキーワードになっている。

Cab Calloway & His Orchestra
収録アルバム: Hi De Ho Man
St. James Infirmary
Columbia
2009-02-02


おまけ:ベティさんとキャブのコラボは、この《聖ジェームズ診療所》の他に、The Old Man of the Mountain《山の老人》及びMinnie the Moocher《ミニー・ザ・ムーチャー》がある。

(CDのみ)
Boop Boop Be Doop
Boop, Betty
Proarte
1993-01-29






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