An earthly nurse sits and sings,
and aye she sings by the lily wean
sayin "little ken I my bairn's father,
far less the land where he dwells in.
陸地の子守り女が座って歌っていた
白百合のような幼な子のそばで歌う
「この子の父親のことはよく知らないの
 ましてやあの人の住みかなんて」

For he came on night to her bed,
and a grumbly guest, I'm sure was he,
saying "here I am, I, thy bairn's father,
Although I be not comely."
男がある夜、女のベッドへやってきた、
うろんなこのお客こそ、その人だとわかった
「俺だ、おまえの子の父親だ、
 美しくなかろうともな」

"I am a man, upon the land,
I am selkie on the sea,
and when I'm far, and far frae land,
my home it is in Sule Skerry."
「俺は陸の上では人間の男、
 海の中ではセルキー、
 俺は陸地から遠く、遠く離れたところに住む
 俺の住みかこそはスール・スケリー」*1

And he had taken a purse of gold
and he had placed it upon her knee
saying "give to me my little young son,
and take thee up thy nurse's fee.
そして男は持ってきた金貨入りの財布を
女の膝の上に置いた
「俺の幼い息子を渡せ、
 そしてお前の養育費を受け取るがいい」

and it shall come to pass on a summer day,
when the sun shines bright on every stone,
I'll come and fetch my little young son
and teach him how to swim the foam."
「いつかある夏の日にやってくる、
 日光が全ての岩を照らす頃、
 俺は幼い息子を連れて帰ってくるだろう、
 そして泳ぎ方を教えるのだ」

"I am a man, upon the land,
I am a selkie on the sea,
and when I'm far from every strand
my home it is in Sule Skerry."
「俺は陸の上では人間の男、
 海の中ではセルキー、
 俺はあらゆる岸辺から遠く離れたところに住む
 俺の住みかこそはスール・スケリー」

"And ye shall marry a gunner good,
and a right fine gunner I'm sure he'll be,
and the very first shot that e'er he shoots
will kill both my young son and me."
「お前は銃の名手と結婚する
 きっと素晴らしい射手だろう
 その男が撃つときはいつでも命中する
 それが息子と俺を殺すだろう」

"I am a man upon the land,
I am a selkie on the sea,
and when I'm far, far, far from land,
my home it is in Sule Skerry."
「俺は陸の上では人間の男、
 海の中ではセルキー、
 俺は陸地から遠く、遠く、遠く離れたところに住む
 俺の住みかこそはスール・スケリー」

*1 スール・スケリー(スール岩礁)は、スコットランドの北方にある小島。

text & tune: アイルランド及びスコットランドの民謡をCecil Corbel(1980 – )がアレンジしたもの

チャイルド・バラッド113番。シェットランド諸島の女性から採取されたものが1850年代に出版されたのが文献初出と見られている。元来は「great selkie(偉大なセルキー)」ではなく「grey selkie(灰色のセルキー)」であった。
セルキーとはアイルランド・スコットランドに伝わる伝説で、アザラシの皮を脱ぎ着することで人間になったりアザラシになったりすることができる存在。白鳥処女説話、異類婚姻譚の一種。陸の人間と出会って夫婦になることもあるが、最後は別離で終わるのがお約束となっている。女は総じて美しいが、男は美しいとされることもあれば醜いとされることもある。北欧にも似た伝説がある。北欧の少数民族やイヌイットなどの、アザラシの皮を衣類として使う人々をアザラシの精と解釈したという説もある。

セルキー - Wikipedia

 ja.wikipedia.org
やまなか みつよしのバラッド・トーク - 第52話 アザラシの予言  「スール・スケリー島の大アザラシ」 ("The Great Silkie of Sule Skerry", Child 113)
「バラッド」は古くから英語圏に伝わる物語歌で、その不思議な物語の世界に皆さんをご案内したいと思います。物語の内容に興味を持たれて、元々の原文を読んでみたいと思われる方には原詩を、原文はちょっと難しいので訳で読んでみたいと思われる方のために訳詩も用意しています。
 balladtalk.com

セシル・コルベル
収録アルバム: SongBook vol.2
The Great Selkie
Bran Music
2015-04-13


おまけ:アイルランドの長編アニメ映画『ソング・オブ・ザ・シー』はセルキー伝説をベースに制作された、セルキーの母親を持つ兄と妹のアドベンチャー。劇中歌としてアイルランド民謡《デュラマン(海草)》も登場する。