'O where ha you been, Lord Randal, my son?
 And where ha you been, my handsome young man?'
'I ha been at the greenwood; mother, mak my bed soon,
 For I’m wearied wi hunting, and fain wad lie down.'
「どこに行っていたのだね、レンダル卿よ、息子よ、*1
 お前はどこにいたのだね、かわいい若者よ?」
「緑の森に行っていました。母上、すぐに寝床の用意を、*2
 狩りで疲れましたから、ただただ横になりたいのです。」

'An what met ye there, Lord Randal, my son?
 An what met ye there, my handsome young man?'
'O I met wi my true-love; mother, mak my bed soon,
 For I’m wearied wi huntin, an fain wad lie down.'
「そこで誰と会ったのだね、レンダル卿よ、息子よ、
 そこで誰と会ったのだね、かわいい若者よ?」
「恋人に会いました。母上、すぐに寝床の用意を、
 狩りで疲れましたから、ただただ横になりたいのです。」

'And what did she give you, Lord Randal, my son?
 And what did she give you, my handsome young man?'
'Eels fried in a pan; mother, mak my bed soon,
 For I’m wearied wi huntin, and fain wad lie down.'
「彼女はお前に何をさしあげたのだね、レンダル卿よ、息子よ、
 彼女はお前に何をさしあげたのだね、かわいい若者よ?」
「鍋で揚げたウナギを。母上、すぐに寝床の用意を、*3
 狩りで疲れましたから、ただただ横になりたいのです。」

'And wha gat your leavins, Lord Randal, my son?
 And wha gat your leavins, my handsom young man?'
'My hawks and my hounds; mother, mak my bed soon,
 For I’m wearied wi hunting, and fain wad lie down.'
「お前の食べ残しは誰にやったのだね、レンダル卿よ、息子よ、
 食べ残しは誰にやったのだね、かわいい若者よ?」
「わたしの鷹と猟犬たちに。母上、すぐに寝床の用意を、
 狩りで疲れましたから、ただただ横になりたいのです。」

'do what becam of them, Lord Randal, my son?
 And what becam of them, my handsome young man?
'They stretched their legs out an died; mother, mak my bed soon,
 For I’m wearied wi huntin, and fain wad lie down.'
「そのお供たちはどうなったのだね、レンダル卿よ、息子よ、
 お供たちはどうなったのだね、かわいい若者よ?」
「足を突っ張らせて死にました。母上、すぐに寝床の用意を、
 狩りで疲れましたから、ただただ横になりたいのです。」

'O I fear you are poisoned, Lord Randal, my son!
 I fear you are poisoned, my handsome young man!'
'O yes, I am poisoned; mother, mak my bed soon,
 For I’m sick at the heart, and I fain wad lie down.'
「お前は毒を盛られたのではないだろうね、レンダル卿よ、息子よ、
 お前は毒を盛られたのではないだろうね、かわいい若者よ!」
「さよう、毒を盛られたのです。母上、すぐに寝床の用意を、
 胸が苦しいので、ただただ横になりたいのです。」

'What d’ye leave to your mother, Lord Randal, my son?
 What d’ye leave to your mother, my handsome young man?'
'Four and twenty milk kye; mother, mak my bed soon,
 For I’m sick at the heart, and I fain wad lie down.'
「お前はこの母に何を遺してくれるのだね、レンダル卿よ、息子よ、*4
 この母には何を遺してくれるのだね、かわいい若者よ?」
「二十四頭の乳牛を。母上、すぐに寝床の用意を、
 胸が苦しいので、ただただ横になりたいのです。」

'What d’ye leave to your sister, Lord Randal, my son?
 What d’ye leave to your sister, my handsome young man?'
'My gold and my silver; mother, mak my bed soon,
 For I’m sick at the heart, an I fain wad lie down.'
「お前の妹には何を遺してくれるのだね、レンダル卿よ、息子よ、
 妹には何を遺してくれるのだね、かわいい若者よ?」
「わたしの金と銀を。母上、すぐに寝床の用意を、
 胸が苦しいので、ただただ横になりたいのです。」

'What d’ye leave to your brother, Lord Randal, my son?
 What d’ye leave to your brother, my handsome young man?'
'My houses and my lands; mother, mak my bed soon,
 For I’m sick at the heart, and I fain wad lie down.'
「お前の弟には何を遺してくれるのだね、レンダル卿よ、息子よ、
 弟には何を遺してくれるのだね、かわいい若者よ?」
「わたしの屋敷と領地を。母上、すぐに寝床の用意を、
 胸が苦しいので、ただただ横になりたいのです。」

'What d’ye leave to your true-love, Lord Randal, my son?
 What d’ye leave to your true-love, my handsome young man?'
'I leave her hell and fire; mother, mak my bed soon,
 For I’m sick at the heart, and I fain wad lie down.'
「お前の恋人には何を遺すのだね、レンダル卿よ、息子よ、
 お前の恋人には何を遺してやるのだね、かわいい若者よ?」
「彼女には地獄と炎を。母上、すぐに寝床の用意を、
 胸が苦しいので、ただただ横になりたいのです。」

*1 RandalはRandolphの異形。古ノルド語で「盾+狼」を意味する。Lordは爵位を持つ貴族男性への敬称で卿などと訳される。sirは準男爵か騎士などの準貴族の爵位か、単純に目上の男性への呼びかけであり、厳密に区別せねばならないが、日本だとなぜかいっしょくたにされてしまう。
*2 緑の森は、中世では人間の法が及ばない異世界、妖精の国、あるいは性的な場所とされていた。中世の騎士よろしく妖精にとらわれかけた、もしくは女郎宿に行っていたとも解釈できる。
*3 ウナギは中世ヨーロッパではポピュラーな食材だった。ウナギの血液には毒があり、生き血を飲めば中毒して下痢や吐き気などを引き起こすが、熱を通せば問題ない。ウナギのフライが生煮えだっただけかもしれないが、「まだらのウナギ」「四つ足のウナギ」とするバージョンもあり、ウナギと騙されてウナギではない毒蛇などの毒物を食べさせられた可能性を示唆している(ただし、実際には蛇の毒は加熱すると無毒になる)。
*4 中世では、故人の持ち物をどんなにつまらないものでも残らず形見分けをするという風習があった。「遺言詩」というジャンルができるほど。嫌いな奴に嫌がらせのいやげものを押し付けることも。

text & tune: 英国民謡

チャイルド・バラッド12番。《ロード・ランダル》《ランダル卿》とも。
毒殺と形見分けを主題とする謎めいた民謡。haveがhaになってたりmakeがmakになってるのは別に誤字ではなくて中世英語や地方の民謡にありがちないい加減なつづり。
多くのパターンがあり、主人公はロナルドであったりランサムであったりと、名前がはっきりしなかったりする。また、歴史上の人物をモデルにしているのではないかという指摘もあり、詩人ウォルター・スコットはスコットランドの英雄でイングランドに毒殺されたという噂のあったマレー伯トーマス・ランドルフ(Thomas Randolph, Earl of Moray)の名を挙げている。
ちなみに同系統の民謡がヨーロッパ中にある。最古の記録はイタリアの民謡L'Avvelenato《毒を盛られた男》(1629年に文献初出)とされている。

なぜレンダルは毒を盛られたのか? その理由ははっきりしない。
毒を盛った恋人に対し「首をくくる縄を」とするパターンもある。
しきりに寝床を求めるのは、単に休みたいということではなく、死を予期して死の床を準備してほしいと母親に頼んでいるのである。

動画の音源はイタリアの音楽研究者Giordano Dall'Armellinaによる『Ballate popolari britanniche. Con CD Audio』というオーディオブックが元になっているが、日本では現時点ではほとんど入手不可能。ただし、アップルミュージックで音源を入手することが可能となっている。やったぜ。


Custer LaRueのバージョンはメロディはだいぶ近いが、女声+アカペラであり、タイトル及びタイトルロールの名は《ロナルド卿》となっている(発音自体は「レンダル」に非常に近い)。


収録アルバム:Custer LaRue: Daemon Lover
Lord Ronald
Sono Luminus
1993-01-01


おまけ:ボブ・ディランの《はげしい雨が降る》という歌は、この民謡が元となっているとされる。