Child Owlet《チャイルド・アウレット(豆梟の君)》Kathryn Roberts & Sean Lakeman
《CAUTION!! この記事には残酷な記述が含まれています》
Lady Erskine sits all in her room
sewing a silken seam
A chain of gold for Child Owlet
as he goes out and in
It fell once upon a day,
she turned to him and sweetly said
"You must cuckold your old uncle,
come into my bed ".
アースキン奥様は日がな部屋に座って*1
絹を縫い合わせておりました。
金の鎖は豆梟の君のため、*2
出たり入ったりのちび梟に。
恐るべきそのある日のこと、
奥様が豆梟の君に向かって優しくこう言いました。
「老いぼれのあなたのおじさまを寝取られ男にしてやりましょうよ、
わたくしのベッドへいらっしゃい。」
"Oh stop forbid Madam" he said
“How could that be done?
I wouldn't cuckold Lord Ronald
for I'm his sister's son".
She's taken out a little knife
that lay beneath the marriage bed
And stabbed below her satin dress
until the blood ran red.
「おやめくださいまし、滅相な奥様」と彼は言いました
「どうしてそんなことができましょうか、
ロナルド卿を寝取られ男にするなんて。
わたしはあの方の妹の息子なのですから。」
奥方は小さなナイフを取り出しました
夫婦の寝台の下に置いてあったのを
サテンのドレスの下の身体に突き立てました、
血がほとばしって真っ赤になるまで。
That poor young man,
poor young man.
ああ哀れな若者よ、
哀れな若者よ。
Then in came old Lord Ronald
hearing his Lady moan.
"What blood is this upon the floor
that drips on the hearthstone?"
"Child Owlet, your sister's son,
has only just gone from my door,
If I hadn't have been a good woman
I'd have been Child Owlets whore."
そこに老ロナルド卿がやってきました、*3
奥方のうめき声を聞いて。
「床の上のこの血は何なのだ、
暖炉の敷石にまで垂れているのは。」
「豆梟の君、あなたの妹の息子が、
たった今わたくしの部屋から出て行きました。
もしわたくしが貞女でなければ、
あの子の情婦になっていたことでしょう。」
He's taken poor Child Owlet
put him in prison strong
And all his men a council held,
how they would work him wrong.
Some said they would see him hang,
some said they would see him burn
Some said they would see that young man
between wild horses torn.
ロナルド卿は哀れな豆梟の君を捕まえて
堅固な牢に押し込めました。
そして家来をみんなあつめて会議を開きました、
若者の過ちをどうこらしめてやろうかと。
ある者は吊るせと言い、
ある者は火あぶりにと言い、
ある者はこの若者を
暴れ馬に引き裂かせようと言いました。*4
That poor young man,
poor young man.
ああ哀れな若者よ、
哀れな若者よ。
"There are horses in my stable
stand can run so speedily,
And you must go to my stable
and bring out four for me."
He tied a horse to his two feet
and tied a horse to either hand
And sent them charging down the moor
as fast as they could run.
「わしの厩舎にいる馬たちは
それはそれは素早く走ることができる。
お前たちわしの厩舎に行き、
四頭の馬を連れて来い。」
ロナルド卿は甥の二本の足を馬にくくりつけ
両手も馬にくくりつけました。
そして馬たちを荒野に向かって駆け下りさせました、
できる限り全速力で。
There was not a place upon the moor
nor yet a strip of ground
Not covered over with his blood
and pieces of his skin.
Not a place upon the moor,
a blade of grass or holly bush
Not covered over with his blood
and pieces of his flesh.
荒れ野の一帯が
ほんのわずかな地面さえも、
豆梟の君の血が覆わぬところはなく、
その皮膚のかけらが散らばらぬところもなくなりました。
荒れ野の一帯が
鋭い草の葉やひいらぎのしげみのないところはなく、
豆梟の君の血が覆わぬところもなく、
その肉のかけらが散らばらぬところもなくなりました。
That poor young man,
poor young man.
ああ哀れな若者よ、
哀れな若者よ。
*1 アースキンはスコットランド系の名字。スコットランド人は野蛮だという偏見があった。マクベス夫人ではないが、「スコットランド女はこういうこと平気でするだろう」という偏見が含まれている可能性がある。
*2 チャイルドは古語で「貴公子」というほどの意味。アウレット(オウレット)は実在する苗字や家名でもあるが、小型のフクロウ、もしくはフクロウのヒナを指す。「ちびフクロウ坊ちゃん」「雛梟の貴公子」「豆梟殿」というほどの意味になろうか。人妻に言いよられるほどの美男子のあだ名としてはなんだか変わっている。あるいは、小さくてかわいい少年の愛称だったのかもしれない。
*3 ロードは公爵以下爵位持ちの男性に対する敬称。卿と訳される事もある。ロナルドは公爵かもしれないし伯爵かもしれないが、はっきりとはわからない。
*4 馬を飼ってる国なら大概一度は思いつく、僕が考えた最強に痛い処刑法。東西を問わず、反逆罪に対する最高刑として課される。以下は解説に詳述。
text & tune: 作者不詳の英国民謡
チャイルド・バラッド291番。文献初出は1828年出版のスコットランド民謡集『Ancient Ballads and Songs of the North of Scotland』だが、当時のゴシック趣味を反映した民謡風の創作とする説もある。
目上の人の妻(継母であったり、兄嫁であったり、上司の妻であったり)に言いよられ、それをはねつけたことで逆恨みされて困難に遭うというモチーフは非常に古くからあり、古代エジプトの民話『アヌプとバタ』にまでさかのぼることができる。うまくやり過ごす事もあれば、このチャイルド・アウレットのように救いのない結末に終わるパターンもある。男より強い権力を持つ女への恐怖と不信が根底にあるのかもしれない。
*4で言及した処刑法は、八つ裂き刑、四つ裂き刑、引き裂き刑などの通称がある。古今東西の記録には少なからず言及されるものの、ほとんど伝説に等しい。
フランスで百数十年ぶりに実施してみたところ「四馬力程度では人体を引き裂くのは無理」という結論に達したというオチがある(そもそも4頭同時にバラバラの方向に馬を走らせるというのがとても難しい。もっとも人体に四馬力の力がかかった時点で激痛で絶命しそうだが。マメフクロウくんが成人男性でなく少年だったとしたら、四馬力でも可能かもしれない)。なおこの際に処刑されたのは、ルイ15世暗殺を企んだロベール=フランソワ・ダミアンであった。3頭の馬に引っ張られた1頭がコケる、そもそも引っ張ったくらいじゃ人体はちぎれないなどのアクシデントが続き、すでに死体になっていたダミアンの四肢に切れ目を入れて対応し、ようやく処刑が完了したのは4時間後であった。死刑執行人であったシャルル=アンリ・サンソンは、その時の詳細な記録を残している。補佐を担当した伯父のニコラ・シャルル=ガブリエルはあまりの凄惨な光景にショックを受け、そのまま隠居してしまった。
イギリスでは「首吊り・内蔵抉り・四つ裂き」というセットにされ、反逆罪の最高刑として行われた。ギロチンが人道的に思えるレベルのエグさなので、詳しく知りたければ勝手にwikiって下さい。この刑を受けた著名な人物としては、ガイ・フォークスがいる(国際ハッカー集団アノニマスやVフォーヴェンデッタのVが被ってるお面のモデルになった人)。ガイは自ら絞首台から飛び降りて首の骨を折り、死体となることで後半の刑の苦痛を免れた。
命が軽いので有名な中国では「四馬力でダメなら倍にすればいいじゃない」というわけで、馬ではなく馬車を使って人体を引きちぎるという処刑法をかなり早い時期から考案している。これは「車裂き」と呼ばれる。
なお、日本では牛を使った「牛裂き」が考案され、戦国時代の見せしめやキリシタンの処刑に使われたという記録があるが、江戸時代初期くらいで消えた。良かった。
Kathryn Roberts & Sean Lakeman
収録アルバム: Tomorrow Will Follow Today
※記事の内容を楽しんでいただけましたら、上記Amazonリンクから普段のお買い物をしていただけると幸いです。弊ブログへのささやかな応援(紹介報酬)となります。
イギリスでは「首吊り・内蔵抉り・四つ裂き」というセットにされ、反逆罪の最高刑として行われた。ギロチンが人道的に思えるレベルのエグさなので、詳しく知りたければ勝手にwikiって下さい。この刑を受けた著名な人物としては、ガイ・フォークスがいる(国際ハッカー集団アノニマスやVフォーヴェンデッタのVが被ってるお面のモデルになった人)。ガイは自ら絞首台から飛び降りて首の骨を折り、死体となることで後半の刑の苦痛を免れた。
命が軽いので有名な中国では「四馬力でダメなら倍にすればいいじゃない」というわけで、馬ではなく馬車を使って人体を引きちぎるという処刑法をかなり早い時期から考案している。これは「車裂き」と呼ばれる。
なお、日本では牛を使った「牛裂き」が考案され、戦国時代の見せしめやキリシタンの処刑に使われたという記録があるが、江戸時代初期くらいで消えた。良かった。
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